中3 14 不調のサイン

中学3年
スポンサーリンク

思い返してみると不調は見え隠れしていた。でも私はそのサインに気が付かなかった。最悪の部活が終わったことでほっとしてしまっていた。部活を乗り切ったからもう大丈夫だと安心してしまい、目を離してしまっていた。

部活を引退して受験勉強に本腰を入れなればならない時期に入っても咲は部屋で寝ていることが多かった。志望校は勉強をしないで合格できるような高校ではなかった。先生に提出する日誌には、「眠くて寝てしまった」という文章が今年の3月頃から多くなっていた。

咲は体調が悪いと湿疹が体に出る。その湿疹が5月にひどくなった。引退前に部活内である出来事が起こった時だった。この秋にも湿疹がさらにひどくなっていた。

夏からは突然甘えてくることが出てきた。今までなかったことだった。夏休み明け、秋からはよく平日の朝に「学校に行きたくない」と言うようになった。以前はもっと早く登校していたのに今はぎりぎりに遅刻しないような時間に登校するようになっていた。

最近も表情も暗く覇気がない状態が続いていた。それもクラスのトラブルのせいだと思っていた。

自殺未遂した日の数日前、咲は私に「学校を休んでもいい?」と真面目な顔で聞いてきた。すがるような眼をしていたのに、そのときは私は「誰だって行きたくなるときはあるんだよ」と言って、学校に行かせた。咲はおとなしく私の言う通りにその日も学校に行っていた。ボロボロだったはずなのに。

私は受験の内申書の心配をしており、欠席日数が多くなってはまずいと考えていた。志望校に合格したいのなら、勉強しなければならないし、欠席もなるべくしない方がよかった。部活も辞めなかった理由の一つに内申書のことがあったともいえる。

咲の志望校は姉の実樹が通っている高校だった。実樹と同じ高校に受かることが実樹に負けまいとする咲の望みとプライドだと思った。だから合格させてやりたかった。喜ぶし自信がつくだろう。その高校の生徒であることを誇らしく思いながら通えたら咲もうれしいだろうなと思っていた。それが一番だと思っていた。

中学校に行きたくないと咲が言っても「みんなそんなもの(みんな学校に行きたくないもの)」と自分の考えだけで一蹴して咲の気持ちを聞いていなかった。そして「行けば何とかなる」と残酷なことを平気で言った。本気で私はそう思っていた。志望校に合格してもらうことが優先だった。それには欠席日数を抑えておいた方がよい内申書になると思っていた。愚かだった。とても愚かだった。