中3 58 避けている話題

中学3年
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志望校をどうするかの話し合いを正月休み中にするべきだったが咲がほとんど眠って過ごしていてなかなかチャンスがなかった。

……それは言い訳。私は志望校の話し合いをすることが怖かった。これからどうなっていくのかがわからなくて、その話題に触れることがことが怖かった。そして家族皆が咲の卒業の話も高校受験の話も避けていた。

先延ばしにしても避けていても解決しない。わかっていてもその話題はあまりに重くて家族のだれもが言い出す気力がなかった。

話し合いする気力はなかったけれど、私は誰にも言わずに咲の高校受験のプランを一人で考えていた。

志望校は咲はそのまま変更しないだろう。だとすると受かる確率は1桁かもしれない。きっと受からないだろうからすべり止めが必要だった。
すべり止めの候補は、まず家から近い私立はクソ部活のメンバーが行くから避けたかった。次に通えるけれど家から遠い私立だと今の体力では難しい。かといって危なすぎて一人暮らしはさせられない。
だから公立高校の二次募集を検討していた。候補の高校は少し遠いけれど最近は毎年二次募集がある。もちろん今年もあるとは言い切れないし、その高校の二次募集をあてにして第一志望の高校を受験するのは無謀なのかもしれなかった。
でも咲が納得しそうな案はそれしかなかった。通学圏の私立高校の校風より、公立高校の地味な校風の方を咲は気に入っていた。年明けに桜井先生に相談してみようと私は一時その考えを棚上げにした。

 

 

正月休み中に一ついいことがあった。

実樹がもらったお年玉で買い物に行く日に咲も一緒に行くと当日に言い出して

二人で出かけたことだった。

ほとんど寝たきりだったのにその日は朝から調子がよさそうに見えた。咲の体力が持たないと思って私は車で二人をショッピングモールまで送った。約束の時間に二人を迎えに行くと、二人とも大きな紙袋を手に提げていた。中身は洋服だった。

死のうとしていたら服はもう買わないはずだ。服を買ったということは「当面の間」などと本人は思っているのかもしれないが生きようという気持ちが出てきたのだと思う。抗うつ薬が効いてきたのだろうか。嬉しかった。

それに買い物を楽しんだと見えて二人とも表情が明るく柔らかかった。特に咲がその辺の女子みたいに普通の表情をしたのを見たのは久しぶりだった。

咲も気分転換をしたかったのだろう。買い物をして仲の良い実樹ともたくさん話せてきっと二人にとってよい日になった。よかった。嬉しかった。

もう冬休みが終わる。咲は志望校を落ちた場合をどう考えているのか。まだ聞けなかった。