中3 6

中学3年
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夫かが帰ってきた。仕事着のままだ。顔は少しこわばっているように見えた。

「どうしようか…

まず一人ずつ話そう。お前から話を聞こうか」夫は最初に私と話すと言った。

私達は咲を部屋に残して居間に行った。私は夫に促されて今日あったことをなるべく時系列で話した。本人の気持ちも聞いたことは話した。話しながら思い知った。本当に本当に今起こっていることは現実だと。夫は黙って私の話を聞いていた。

私が一通り話し終えた後すぐに二人で娘の部屋に戻った。死ぬなとしつこく念押ししていたが、この短い間でもすきを見て死んでしまうんじゃないかと心配だった。咲はベッドの上で膝を抱えていた。

「自殺しようとしたんだって?」と夫は娘を見ながら言った。

「うん」娘は膝を抱えたままの姿勢で言った。少し警戒するような表情だった。

「人生に絶望したの。もう生きているの嫌なの」

「気持ちはわかるよ。人生は長い…」

「本当に?」娘ははっとしたように父親の顔を見つめた。表情が少し変わっていた。

「俺もそう思うことあったよ」

夫の学生時代も同じように心がつらい時期が長く続いた。その時の話を夫は話し出した。ちゃんと聞いている様子だった。夫は話をわかりやすく整えてその時の自分の気持ちを話し、冗長ではない程度に切り上げた。

おそろらくこの時まで自分の絶望や孤独を誰にもわかってもらえないと思っていて、父親の話を聞いたことで「少しは話が分かる相手もいる」と思ったのではないだろうか。