中学3年

中3 10

翌朝は何事もなかったかのようにやってきた。昨日あれだけ大きな事件が起こったのに、また朝がくることが不思議に思えた。咲が眠っているのを確認すると私は部屋から出た。 見かけだけはいつもと同じ朝を一通りこなし、咲は学校に行った。食事...
中学3年

中3 9

咲の姉の実樹が高校から帰ってくると私たちは一緒に食事をとった。少し気分が和らいだ。実樹と少し話し、最低限の家事を終わらせた後で、咲の部屋に私の寝るための布団を敷いていると咲が部屋に入ってきた。表情はうつむき加減で明るくなかった。「今...
中学3年

中3 8

安易に死のうと思うのは人生経験が少ない中学生だからだ。今辛かったとしても中学校はあと数か月で卒業する。卒業までの我慢だ。そのあと高校に行ったらもうすっかり気分も変わって今の辛さを忘れていくだろう。そう言い聞かせれば気持ちが落ち着いて...
中学3年

中3 7

夫と咲が二人で話した後で,私達は今度は親子三人で一度長い間話し合った。咲の気持ちも聞いたし、咲は私たちの言うことを聞いて自殺しないと約束した。 そして卒業まであと少しの間このまま今の中学校に通い続けることにした。もちろん辛かっ...
中学3年

中3 6

夫かが帰ってきた。仕事着のままだ。顔は少しこわばっているように見えた。 「どうしようか… まず一人ずつ話そう。お前から話を聞こうか」夫は最初に私と話すと言った。 私達は咲を部屋に残して居間に行った。私は夫に促されて...
中学3年

中3 5

私が電話で咲の自殺未遂を伝えても夫の声はとても冷静にきこえた。夫は仕事中だったが帰ってくると言う。 咲はまたソファーに腰かけていた。うつむいていて表情がよく見えなかった。私が話しかけると億劫そうに短い返事をする。まだ学校の制服...
中学3年

中3 4

咲は死ぬ邪魔をした私を責めなかった。私の気持ちを考えたのかもしれない。話しても無駄だと思ったのかもしれない。私は咲の気持ちはその時全然考えることができなかった。思いやることができなかった。私は自分の大切な娘が自殺未遂を何度もしていて...
中学3年

中3 3

足ががくがくした。のどの奥がぎゅっと細くなって締め付けられるように痛む。息を吸い込む度にのどが締め付けられる。吐くときも苦しい。普段はどんな風に自分は呼吸をしていたんだろう。思い出せない。 私は咲に聞きたいことを立て続けに聞い...
中学3年

中3 2

「居間に行こうか。」 私が玄関のすぐ脇にある居間に行くと、黙って咲もついてきた。 そしてソファーに並んで腰かけた。そのままどのくらい時間がたったのか憶えていない。ほんの数分だったのかもしれない。 「言いたくなかった...
中学3年

中3 1

何の変哲もない朝だった。10月の中旬を過ぎて空気が冷たくなってきていた。私はいつもと同じ時間に出勤して自分の席でいつものようにスマホの通知を確認した。 一件の不在着信がいつもと違っていた。 発信元は娘の咲の通う中学校だっ...