中3 1

中学3年
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何の変哲もない朝だった。10月の中旬を過ぎて空気が冷たくなってきていた。私はいつもと同じ時間に出勤して自分の席でいつものようにスマホの通知を確認した。

一件の不在着信がいつもと違っていた。

発信元は娘の咲の通う中学校だった。学校から電話がかかってきたことは今までなく、気になった私はすぐに学校に折り返し電話をかけて担任の桜井先生につないでもらった。意外なことにすぐに先生本人につながった。「咲さんが学校に来ていません。学校を一通り探してから電話しています。欠席ですか?」先生は言った。

いつもの時間に学校へ向かったはずだ。玄関を出ていく咲を私は見送っていた。変わった様子はなかった。事件を起こすような性格ではない。周囲の状況もよく読める。あの子が何か軽はずみな行動を起こすことは考えられない。

ではなぜ学校に行っていないんだろう・・・。

私は電話口の先生に「すぐに家に戻って部屋に居るか確認します、もしかして具合が悪くなって戻ったのかもしれないので」と言って電話を切った。頭が沸騰しそうなくらい血が上ってきたのが自分でわかった。その勢いで上司に何の遠慮もなく「今日は帰る」と宣言した。理由は言わなかった。一分一秒が勿体ないと思った。すぐに自宅に戻らなくては。上司が何か言っているのを背中で聞きながら退勤した。

咲が自分の意志で失踪することはないはずだ。何かに巻き込まれたか事情があるんだ。

車を運転して帰る家までの道のりでよく事故を起こさなかったと思う。一時停止も信号もどのように運転したのか憶えてない。頭の中は咲のことだけしか考えられなかった。悪い想像が膨み続けた。

家に着いたとき学校の先生がすでに家の前で二人で待っていた。自宅と中学校は近い。あのあとで電話を切ってすぐに駆けつけてきてくれたのだろう。一人は桜井先生、もう一人は体育の先生だった。

挨拶もそこそこに私はすぐに鍵を開けて家に飛び込んだ。玄関に咲の靴があった。私は自分の靴を乱暴に脱ぎすてて家に入ると大声で「さき!!!」と呼んだ。

少し間があったがひょっこりと咲が出てきた。すごく怒った顔をしている。大きな怒りを理性で押さえつけているような顔だった。両手は拳を握っている。でもともかく咲は家に居た。無事だった。

「どうしたの?学校は?」

咲は答えない。

「具合が悪くなったの?」

それにも咲は答えない。

何かとても怒っているようだし、今日学校に行くのは無理だろう。私はそう思って、玄関口に遠慮がちに入ってきていた先生二人に言った。

「すみません、今日は休みます。私が一緒に休みます。心配お掛けしてすみませんでした。」

先生方は口々に何か応じるような言葉を残して、あっさりと帰っていった。私と咲は二人で平日の家の玄関で向かい合った。

 

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