中3 12

中学3年
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実樹に咲の自殺未遂のことを話したのは当日ではなくその翌日だった。学校帰りの実樹を車で迎えにいったときに車を駐車場に停車させて時間を取り、状況を詳しく伝えた。実樹も動揺していた。

「昨日咲の部屋から大きな音がしたの。朝の7時前にお父さんとお母さんが一階にいたときだよ。咲の部屋に見に行ったら床に咲が寝ていて、そのあとすぐ起きたんだけど、私はそこでシッシッて追っ払われたの。朝時間がなかったからそのままになっちゃったけど、あれ絶対何かやろうとしていたよ」

「咲が首を吊ろうとしてたのよ」私は答えた。自分の口からこんな言葉が出るのが信じられなかった。まだ悪夢の中にいるみたいに思えた。「首を吊る」という言葉が自分に堪えた。

「咲は昨日首を吊ろうとして途中で紐が切れて失敗したの。一度失敗したあと普通に朝学校に行ったふりをして家に戻ってきていてね、私たち全員が出かけて家に誰も居なくなったら、紐を補強してそれでもう一度首を吊るつもりでいたんだよ。桜井先生から咲が学校に来ていないって電話が来てね、電話の後家にすぐ帰ったら、咲が首吊り用の紐を三つ編みして補強してたとこだったんだよ。」感情が込み上げてきた。喉が締め付けられて声を出すのが苦しくなりしばらく私は黙った。実樹も黙ってじっと待っていた。また声が出るようになってくるまで待って私は言った。

「咲にやさしくしてやってね」それくらいしか言えなかった。実樹もまだ高校生だ。高校生に負担をかけたくなかった。

 

 

 

数週間が過ぎた。咲は時々休みながらも学校に行っていた。そして学校から帰るとすぐに自分の部屋に行って眠っていた。居間で制服姿のまま眠っていることもあった。休日は食事以外の一日中のほとんどを眠り続けてた。その食事も「お腹の調子が悪い」とか「食欲がない」とか理由をつけてあまり食べていなかった。自殺未遂のあの日以降咲は家で勉強をすることはなくなった。宿題もしなかった。たまに姉の実樹とは話をしていることもあった。実樹と話すほうが気が楽だったのかもしれない。

私はその間咲の部屋で寝起きし、咲にまとわりついた。合間にできる限り本やネットで情報を集め続けた。なるべく刺激しないようにしていた。でもたぶん本人はとてもうっとおしくて辛かったと思う。会社が終わるとすぐに家に帰った。食料品はまとめ買いしておき、少しでも長く家にいることにした。家と会社以外は出かけなかった。毎日怖かった。毎日が辛かった。

でも咲は私や夫とは比べ物にならないくらいの苦しさの中にいた。この時の咲の辛さに気が付けなかったことは今もずっと後悔している。

 

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