中3 75 病院の食事

中学3年
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荷物は看護師さんが持った。窓のない細長い部屋を出て咲は「じゃあまたね」と言って振り返らずに二枚目のドアの内側に戻って行ってしまった。

咲が行ってしまった後、私は咲の荷物を持っている看護師さんに「二宮医師に今回の入院について退院の見込みなど詳しい話を聞きたいので時間をとってもらうことはできますか?」と聞いてみた。その看護師さんは「二宮医師に聞いてみてまた連絡します」と、請け合ってくれた。

その言葉に安心して私と夫は看護師さんに入り口を開けてもらって閉鎖病棟の外に出た。

面会は終わった。

咲は他の人が見ているときには感情を表に出さずに普通を「演じて」いる。悲しいとか悔しいとかを感じても言わない。家族の前や一人になったときに感情を出す。だから表面はあっさりしているように見えても感情が動いていないとは限らない。こんなに長く離れて暮らすのは初めてなので、直接態度には出さなくても、親に会えてうれしい、毎日会えないのはさみしいと思ってくれているといいと願った。一人で空回りしているのはさみしいと思った。

咲のこの「奥ゆかしい性格?」は部活には完全にマイナスに働いてしまった。ターゲットにされてしまったのだ。

面会の後夫と二人でラーメンを食べに行った。おいしいと評判の店のはずだったけど、私には輪ゴムを油で煮込んで塩味を付けたように感じた。細かい風味がわからなかった。

頭の中が咲のこと、受験のことで埋まっていた。夫も口ではおいしいと言って食べていたけれど実は私と同じように思っていたのではないだろうか。

咲はお昼に何を食べているんだろう。食べ物やお花は差し入れできないと言われていたし、売店でおやつを買う許可も出ていなかった。

食事は完全に病院に管理されていた。一日3食の他におやつも一回出る。希望すれば朝食はパンにすることもできる。その場合は一食20円高くなるそうだ。咲だけではなく思春期病棟に入っている子たちはみんなそうだと言っていた。(勘違いという可能性もあるけれど。)

面会の時に

「外出や外泊ができる子はそのときに好きなものを食べるんだよ。『食える時に食え』って外泊する子はアドバイスされるんだって。私が外出の時には海鮮丼が食べたいな」

と言っていた。ラーメンも出ないだろうな。

私は出産のときに入院中の病院でお昼ご飯に出たおそばを思い出した。つゆは冷め、麺は伸びていて、はがれかけてとろけた衣の天ぷらが上にのっていた。

 

病気が発覚してから咲はやせてしまった。食欲がなく眠ってばかりいた。

病棟で同じような子たちと話すことで少しでも気持ちがほぐれてご飯をちゃんと食べられるといいな、と私は思った。おそばならちゃんと熱くて天ぷらがサクサクして伸びていない麺で薬味がついているのを食べているといいな。

 

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