中3 65 荷物を持って再び病棟へ

中学3年
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頭が働きだしてから私はだんだんと辛くなってきていた。主のいない部屋で入院に必要なものを準備していると、その状況から辛い気持ちがますます膨らんできていた。

「最後のとどめ」みたいに登場した、咲の隠していた紐を見つめていたら涙で視界がぼやけてきた。まばたきのたびに涙が頬を伝って顎に流れていく。

でも止まっている時間はない。病院は遠いのだ。往復を考えたらもう家を出たほうがいい。入院に必要な物を今日届けなければ咲は困ってしまうだろう。

涙を拭っていると今度は瞼が腫れるので流れるままにして荷造りを進めた。病院に戻ってから、咲にも他の誰にも「泣いてきました」という顔を見せたくなかった。

頭が回らなくて時間がかかってしまったがどうにか持ち物の準備ができた。

途中で咲の部屋のタンスの引き出しを探したときに部活で使っていたTシャツやジャージなどが出てきていた。ロゴと名前入りで古めかしいけれど派手なデザインで、見ていると自分によくない感情が立ち上がってくるのがわかった。

咲の入院用の荷物をまとめたあと、ついでに部活用の忌々しいウエアを全部ひとまとめにしてゴミ袋に入れた。勢いに任せて捨てたかったが、本人の許可もとらずに捨てたら悪いと思い、捨てずに物置の奥に押し込んだ。もう見たくなかった。

物置の奥に「ゴミ」を押し込んだことで少しだけすっきりした。すぐに私はまとめた荷物を持って病院に引き返した。気が付いたらお昼ご飯を食べていなかった。頭が入院のことでいっぱいで空腹も感じなかった。

再び閉鎖病棟に荷物を持って入ると、咲の担当の看護師がまた最初に通された窓のない部屋に私を通した。

そこで『入院診療計画書』を渡された。

入院診療計画書には医療保護の欄を丸で囲ってあった。

(他に措置・応急・任意)という種類が書式に書いてあった。

 

担当者                :(二宮医師の名前)

担当看護師              :(咲の担当になった看護師の名前)

選任された退院後生活環境相談員の名前 :(全然面識のない人の名前)

※この生活環境相談員という人は入院中も退院してからもずっと一度も会わずに終わった。名前だけが書類上にあった。

病名                 :うつ病

治療目的               :精神症状の軽減 自殺の予防

治療計画               :薬物治療 作業療法 栄養管理 行動制限 精神療法

検査内容               :血液検査 血算 生化学 感染症

尿一般検査

胸部x線

心理検査

CT検査

推定される入院期間          :2カ月

特別な栄養管理の必要性        :有

 

入院期間2カ月だと3月までがすっぽり含まれる。受験も卒業式も終わって春休み期間中まで入院ということだった。