中3 53 子供の気持ちがわからない

中学3年
スポンサーリンク

自分の子供と並んでいる看護師さんに会釈すると会釈を返してきた。それからその看護師さんは「お大事にね」と笑顔で言って来た廊下を戻っていった。

もうお昼をだいぶ過ぎていた。薬を薬局に受け取りに行ってからどこかでお昼ご飯を調達しよう。学校は朝校門をくぐったことで出席の扱いになっている。今から登校する必要はないだろう。咲の分の給食は誰かが食べてくれるのかなと、ふっとどうでもことが頭に浮かんだ。入院する見込みだったので会社も休むことにしてあった。余った時間を使って帰って入院用の荷物をほどこうと思った。

薬局で薬をもらったあと私は恐る恐る「入院じゃなくなったね」と言ってみた。咲はそうだね、と返事をしたがやはりその声から考えを読み取ることができなかった。声にロックでもかけてるみたいに平坦で感情が入っていないように聞こえた。帰りの車でも寝ていて話をしようとしなかった。

家に戻ると咲はコンビニで買ったパンを少し食べた。いつものように食欲はなかった。それからすぐに「寝るね」と言って自分の部屋に行った。少したってから様子を見に行くと着替えもしないでもう眠っていた。過眠もいつものことだった。

眠っているのを確認してから私は担任の先生に電話をかけた。タイミング良く本人につながったので入院にならなかったことを伝えると、先生も驚いていた。今回も先生に「話を聞きたいから学校に来てほしい」と言われた。毎回診察が終わると学校に呼びだされるらしいのがわかってきた。

時間はまた前回と同じく生徒たちが退校している18時半にしてもらった。再びあの校長室で先生方に囲まれるのかと思うととてもイヤだった。でも咲のためにあの報告会をやってくれるのだからイヤなんて言っている場合でもなかった。病気の原因は学校の部活としか考えられなかったからマッチポンプなのかもしれないのだけれど。

日時は担任の先生が私には都合を聞いて決めたけれど、出席する他の先生方の都合は全くその場で確認していなかった。とすると18時半に打ち合わせや会議が入るのは普通のことで、その時間には学校にいて当たり前なんだろうか。中学校の先生の大変さがこんなとこからも見えた。

 

  翌日咲は学校に行った。「入院すると言っちゃったのに」と慌てる様子がなかったので、入院の話は友達にも話していなかったようだった。

また体調が悪かったが、無理して学校に行った。私の立場からだと学校に行ってくれる方が先生たちの見守りがあるからまだ安心できた。

でも本人はとても辛かったと思う。すぐ精神科や思春期外来に連れて行った方がよかったと今でも悔やんでいる。