その病院は夜中に患者を診る体制はなかった。調べておけばよかった。
副作用や常習性を考えると薬を飲ませることには抵抗があった。しかも精神病の薬を自分の子供が服用するなんていやだった。でも自分の気持ちは無視した。感情は無視して理屈で最良と思う道を進むほかなかった。
抗うつ薬は効き目が出てくるまで2週間から3週間ほどはかかるという。しかし副作用はすぐ出てくる。副作用に耐えられなくて薬をやめてしまうと効き目がないままで終わる。
薬は自分に合うものが見つかるまで様子を見て医師と相談して種類や容量を決めるものらしい。2週間から3週間ほどをすぎても効果が出なかったり副作用がきつかったりしたら医師からまた別の薬を処方される。そうやって自分に合う薬を見つけるのだそうだ。
だとすると自分に合わない薬を最初に処方された場合は
薬が合わないと見極めるまで2、3週間かかる。そして別の薬に変えてから効果を見極めるまでさらに2、3週間かかる。そのうえ薬が効くまでの間は薬の力無しで乗り切らなくてはいけない。薬を飲み始めたかといってすぐには安心できないのだ。
医師に薬が効いているかどうかを確認されたときにしっかり返事できるように、薬の効き目をできるだけ意識してモニターしてもらうよう咲に伝えなくては。その方が正確な診断をできるだろう。
しかし症状が重い場合は話をするどころか起きることや着替えることすらつらい場合もあるだろう。咲がまさにそうなりつつあるように見えた。そんな状態で医師に薬が自分に合うかどうかを伝えられるのだろうか。そもそも話ができるのか。考えることができるのか。
やはり私がガンガン出ていくしかない、様子をよく見て医師に伝える必要がある、そう私は思った。
患者が委縮しないで話せるような医師の方がたくさん情報を引き出せるだろうから診断がより正確になるだろうし、医師の性格や患者との信頼関係は大切だな、だったら大野医師と信頼関係を築けるよう、咲の大野医師の印象がもっと悪くならない方がいい。私が医師の悪口を言わないほうがいい。相性が悪かったら(今のところ悪そうだ)他の病院を受診すればいい。それまで通院できればいい。私はそう考えた。
次の診察は2週間後だった。サインバルタが効くように私は願った。変な副作用が出ないことも願った。
本当に症状が重いときは予約が1週間ごとになります