中3 28 病院での打ち合わせ

中学3年
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妹の自殺は現在でも私の行動にずっと影響していた。私が生きている限りそうだと思う。

咲を一人にさせないために本当は私の母に来てもらって見守ってもらえたらよかったのだが、自分の子供(私の妹)の死を嘆き苦しみ悲しんできた両親には孫の自殺未遂のことはどうしても言えなかった。十分すぎるほどに辛い経験をしたのにさらにこれ以上悲しい思いや苦しい思いをさせたくなかった。だから「母には頼めない、咲と相性が悪い」と学校には伝えていた。

これも失敗だったのだろうか。咲のうつ病のことはどのみち両親に知られることになった。高校3年になってからだったのでそれまでは心配をかけずにすんだけれど。

夫はその点巧みだった。飄々とした様子で何気なく雑談する体で咲の本音をうまく聞き出した。警戒されない距離でずっと見守りながら時に話相手になり、時に私の猪突猛進っぷりをこぼす咲を受け止め、ひっそりと支えた。私のようにすぐに本人に突撃していくような夫でなくてよかった。

 

指定された日、学校側からは学年主任の先生と保健の先生が出席した。市の保健師さん側は松本さんともう一人の女性だった。この女性は最後まで何者かはわからなかった。担任の桜井先生は都合が悪く欠席だった。病院の玄関でメンバーがたまたまそろい、そのまま一緒に大野医師の診察室に向かった。玄関で挨拶をかわした後、それぞれ一言二言会話をポツポツしたが雰囲気はそれほどよくなかった。

大野医師はあの診察室で待っていた。今回はモニターを見ないでこちらに向かって腰かけていた。狭い診察室は予め用意されていた椅子でいっぱいだった。これに人間が腰かけたらもっとぎゅうぎゅうだな、と私はなぜかそんなことを考えた。