中3 39 入院の話を伝える

中学3年
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翌日の土曜日には実樹は部活に一日行っていた。入院の話をするのにはちょうど良かった。私たち両親と咲だけの方が話やすい。私と夫は昼ごはんのあとで部屋に戻ろうとする咲に話がある、と声をかけた。

実は前の診察で「病気は深刻だから入院しなければいけないと思う」と大野医師に言われたの、と私は話を切り出した。咲の表情は変わらなかった。私は話を続けた。今の病院には入院できないこと、転院先が見つかり次第そこに入院することになるだろうと続けても表情は変わらず、入院先の外出許可をもらえるから受験もできる、と最後まで話を聞くと「うん、そうかなと思ったの」と咲は言った。「だって私重いもん」

この子は客観的に自分の状態をわかっていた。それに昨日の嘲るような様子はなかった。

「本人には嫌がられて抵抗されるかもしれないから言わないで転院先に連れていってそのまま入院させようって話だったんだけど、お父さんもお母さんもそれはどうしてもできなかったんだ。わかってもらった上で話を進めたかったんだ」と夫が言った。

「わかったよ。その方がいいんだと思う。私も学校に行くのも辛いから。」

咲は宿題を全くしなくなったことで周囲の目が変わったことを気にしていたのだと思う。それに心も体も辛い中で学校にいる間中病気を隠して元気なふりをしているのに限界を感じていたのだと思う。きっと今までもずっと学校ではありのままの自分を見せることができなかった。学校で自分が演じている咲という人物は元気でいなければいなかったのだろう。

すんなりと入院についてはわかってもらえた。少なくとも表面上は。この子は「わかったよ」と言った以上は入院に反対しないはずだ。

後から気が変わる可能性があることを思いつかなかった。

後は私たちの心情の問題だけだった。でも死なせないためには入院を進めるしかない。

咲は寝ると言って部屋に戻った。休日は食事の時以外はほとんど眠っていた。食事も私たちに合わせてかちゃんと食卓について形ばかり箸を動かしているだけだった。体力が落ち、疲れやすくなっていた。学校で元気なフリをして過ごす以外はもう寝ているだけの毎日で、このままではまずいと本人にも自覚があったのだろう。もし、生きていくのだとしたらだけれど。

月曜日は学校に呼び出されている。診察の日の後に情報を共有する以外に何か話があるのだろうか。でも咲が入院したらそれもいらなくなるかもしれない。学校側は面倒な事情のある生徒には入院してもらった方が本音では助かる。学校側の立場だったらそう思うだろう。