私が咲がうつ病ではないかと疑いだしたころ、咲が学校を休んだ日に桜井先生が家まで様子を見にくることが出てきた。家と学校が近いこともあるだろうし、咲がこれまで優等生だったのに、あの日から学校を時々休むようになり、宿題を一切しなくなっていたことからだと思う。咲は玄関口に先生が来ても「サボリです」と簡単に返事して、「明日は行きます」と気を使った言葉をつなげた。先生は「たまにはガス抜きしたくなるよね」と言って全く咲を叱らなかった。もしかしたらクラスの厄介ごとの仲介をさせようとしたことを後悔していたのかもしれなかった。
あるとき夜に私に先生から電話があった。咲はどうしたのかを問う内容だった。私は相変わらず先生に本当のことを言う気になれなかった。そこで先生が把握しているクラスの厄介ごとの内容をなぞって返答し、「頑張れって言わないで下さい。それから宿題をしなくても責めないで下さい。励まさないでそっとしておいて下さい。今は休ませたいのです。」と、本で仕入れたうつ病になった人への接し方の知識でお願いした。先生は「そのように接する」と約束した。