日渡 ユキ

中学3年

中3 60 志望校は変えたくない

そんなことを考えていると医師は「アカシジアが出ているので薬を変えます。」と言葉をつなげた。風邪の患者に咳止めや解熱剤を処方する時のように自然な調子だった。 自傷をやめられず希死念慮も続いている状態でまた抗うつ薬を変える。効...
中学3年

中3 59 新学期

新学期になった。1月の半ばに学校の個別懇談で志望校を最終的に決めることになっていた。思春期外来の予約の日と学校の個別懇談の日は一日違いだった。さらさらと砂時計の砂のように時間が流れて、いやでも現実が動いていく。 受験が近づ...
中学3年

中3 58 避けている話題

志望校をどうするかの話し合いを正月休み中にするべきだったが咲がほとんど眠って過ごしていてなかなかチャンスがなかった。 ……それは言い訳。私は志望校の話し合いをすることが怖かった。これからどうなっていくのかがわからなくて、その話...
中学3年

中3 57 年内最後の一人図書室登校日

年内の最後の一人図書室登校日に咲が 「先生がこっそりお菓子をくれたよ」と少し笑って言った。 子供が笑った。そんなことが嬉しかった。今日みたいに笑ってくれたら私は何でも耐える。だからもっと笑ってほしいと思った。 咲が...
中学3年

中3 56 冬休み

間もなく冬休みに入った。日中一人になる日は、9時から11時までを学校の図書室で過ごすことになった。図書室には桜井先生も付き添うということだった。おそらく桜井先生には相当な負担をかけていたのだと思うが、正直言って「たった2時間か」と残...
中学3年

中3 55 薬を本当に飲んでいますか?

それ以上の内容を詰めることはなかった。冬休みに登校する話は今日はここまでらしかった。 あの子はどう思うんだろう。部活で学校に来ている下級生たちに姿を見られるのを嫌がるだろうな。考えていると 「一つ聞いていいですか?」保健...
中学3年

中3 54 校長室3度目

約束の時間に学校に行くとまた校長室に案内された。3度目の校長室だった。そこにいた先生方も前回と同じだった。保健師の松本さんも来ていた。まるで映画の再上映みたいに思えた。 私は重い雰囲気の中で先生方に促されて病院での診察の様子を...
中学3年

中3 53 子供の気持ちがわからない

自分の子供と並んでいる看護師さんに会釈すると会釈を返してきた。それからその看護師さんは「お大事にね」と笑顔で言って来た廊下を戻っていった。 もうお昼をだいぶ過ぎていた。薬を薬局に受け取りに行ってからどこかでお昼ご飯を調達しよう...
中学3年

中3 52 本当に入院しないの?

渡されたチラシを読みながら私はロビーで子供が戻ってくるのを待った。ロビーは空いていて普通の病院と同じような作りだったが狭いし雰囲気が違った。 入口に警備員さんがいるのもあるかもしれないけれど、総合病院や医院の待合室はもっとざわ...
中学3年

中3 51 入院しないの?

治療の説明のところは全く覚えていないが医師はその後薬の効き目はどうかと聞いてきたと思う。(この辺も記憶が曖昧です、順番はこの通りではなかったかもしれないです) 前の病院で処方されていたのはサインバルタ(抗うつ薬)ロラゼパム(抗...