中学3年

中3 22 診察のはずが

大野医師は40歳後半ぐらいの女性だった。艶のない髪とそっけないメタルフレームのメガネが優しくなさそうな印象を作っていた。「日渡咲さんですね」大野医師はモニタから目を離さないままで言った。そのままカチカチとマウスとキーボードを操作して...
中学3年

中3 21 診察

12月のはじめ、ようやく思春期外来の受診の日が来た。朝の予約だったので会社は午前休みにしてもらって午後から出社することにしていた。咲も診察が終わり次第学校に行けるように制服姿だった。おとなしく一緒に来たけれど受診することに抵抗も期待...
中学3年

中3 20

そんな様子を見たときは私は咲のことが大切だ、かわいい、価値がある、すごい子だと繰り返し伝えてきた。夫もそうだったと思う。でもあの子の心には届いていないようだった。 中学生にとっては家族のことはそんなに重要ではないのかもしれない...
中学3年

中3 19 校長室

この日は顔合わせと情報共有で終わった。家に戻ると咲は険しい表情で待っていた。私が学校に行って話をしてきたことが相当嫌だったと言う。そして自分のいないところでどんな話をしたのか知りたがった。 ではなぜ自分から先生に自殺未遂のこと...
中学3年

中3 18 校長室

それから私たちは今後どうするかについて話しあった。桜井先生がまとめ役で、松本さんが具体的な提案をし、私が家庭の状況を考えてできそうなことを答えるような感じだった。他の先生方はあまり話をしなかった。まとまったのは下記の内容だった。 1....
中学3年

中3 17 校長室

数日後に欠席した日の夜、 桜井先生から咲に電話がかかってきた。同じ部屋で私は咲の応対する声を聞いていたが、途中で「ちょっと離れてほしい」と言われて部屋を出た。しばらくの間咲が話す声が聞こえたが内容まではわからなかったが、この時...
中学3年

中3 16 あのタオル

11月に入ったある日に咲は私に背中が痛いから押してほしいといって体操着を入れるカバンを持ったまま私のそばに来た。 カバンのファスナーが半分くらい空いていて、中に入っているタオルが見えた。薄手で両端に紐が結びつけてあるあのタオル...
中学3年

中3 15

私が咲がうつ病ではないかと疑いだしたころ、咲が学校を休んだ日に桜井先生が家まで様子を見にくることが出てきた。家と学校が近いこともあるだろうし、咲がこれまで優等生だったのに、あの日から学校を時々休むようになり、宿題を一切しなくなってい...
中学3年

中3 14 不調のサイン

思い返してみると不調は見え隠れしていた。でも私はそのサインに気が付かなかった。最悪の部活が終わったことでほっとしてしまっていた。部活を乗り切ったからもう大丈夫だと安心してしまい、目を離してしまっていた。 部活を引退して受験勉強...
中学3年

中3 13 うつ病を疑い出す

咲がうつ病なのではないかと思うようになったのは【バーゲン本】自殺ー10代のメンタルヘルス6 (10代のメンタルヘルス) を読んだからだった。 17ページにこういう一文がある。 自殺の危険性が高い10代はほとんどがうつ病です。...